死亡後(葬儀後)の手続き一覧表【チェックリスト付/2024年度版】期限や窓口まで全て紹介

 
死亡後や葬儀後に必要な手続きについて、期限や窓口をチェックリスト形式で詳しくご紹介します。死亡届や葬儀についてはすぐにイメージできるかもしれませんが、その他にも多くの手続きがあります。その手続きが何であり、どのように対応すればよいかを事前に知っておくことが大切です。
手続きの多さに圧倒されることもあるかもしれませんが、これらは必ず行わなければなりません。お通夜、葬儀、各種法要が終わり、やっと一息ついたと思っても、そこからが相続手続きの本格的な開始です。普段から慣れている手続きであればスムーズに行えるかもしれませんが、相続に関する手続きは多くの人にとって初めての経験となります。
以下に、大切な人が亡くなった後に必要な手続きを一覧でご紹介します。いざという時に役立ててください。”
死亡後の手続き一覧(2024年度版)
“チェックリスト:死亡後や葬儀後に必要な手続き
死亡届の提出
期限:死亡後7日以内
提出先:市区町村役場
必要書類:死亡診断書
年金受給停止の手続き
期限:国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内
提出先:年金事務所、年金相談センター
必要書類:年金受給権者死亡届、年金証書、死亡の事実を証明する書類(死亡診断書のコピーや戸籍抄本など)
健康保険証の返却
期限:国民健康保険および後期高齢者医療制度は死亡後14日以内、健康保険は死亡後5日以内
提出先:市区町村役場、年金事務所(会社が退職手続きと一緒に行うことが多い)
必要書類:健康保険証
介護保険の資格喪失手続き
期限:死亡後14日以内
提出先:市区町村役場
必要書類:介護保険証、介護保険資格喪失届
世帯主変更届の提出
期限:死亡後14日以内(遅れると5万円以下の過料)
提出先:市区町村役場
必要書類:住民票の世帯主変更届
雇用保険受給資格者証の返還
期限:死亡後1か月以内
提出先:雇用保険を受給していたハローワーク
必要書類:雇用保険受給資格者証
死亡一時金の申請
期限:死亡日の翌日から2年以内
提出先:市区町村役場、年金事務所、年金センター
必要書類:年金番号を明らかにする書類、戸籍謄本、住民票除票、申請者の世帯全員の住民票、振込用の銀行預金通帳
埋葬料の請求
期限:死亡日の翌日から2年以内
提出先:加入している健康保険組合、協会けんぽ
必要書類:健康保険埋葬料請求書、健康保険証、死亡診断書(コピー可)、葬儀費用の領収証など
高額医療費の還付請求
期限:医療費支払いから2年以内
提出先:加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村
必要書類:医療費の明細書
遺族年金の申請
期限:死亡後5年以内
提出先:年金事務所
必要書類:年金手帳(故人および請求者のもの)、戸籍謄本、世帯全員分の住民票の写し、死亡した人の住民票の除票、請求者および子どもの収入を確認できる書類、死亡診断書のコピー、振込先の通帳、印鑑
これらの手続きは、どれも重要ですので、期限内に適切に対応するようにしましょう。”
1.死亡後・葬儀後に行う手続き一覧表(7日以内・2週間以内・1か月以内)
お一人お一人の状況に合わせて行うべき手続きは異なりますので、まずはご自身の状況に応じて必要な手続きを把握することが大切です。不明な点がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
死亡後7日以内にする手続き
“死亡後すぐに行うべき手続きは、主に葬儀関連と役所の手続きです。以下に具体的な手続きの種類と窓口をまとめましたので、参考にしてください。
死亡後すぐに行う手続き
葬儀関連
葬儀社との連絡、打合せ
手続き窓口:葬儀社
期限:死亡後すぐ
葬儀
手続き窓口:葬儀社と決定した会場
期限:初七日までに(死亡後7日以内)
役所の手続き
死亡届の提出
手続き窓口:本籍地または死亡地、または届出人の住所地の役所
必要書類:死亡届(記入例あり)
期限:死亡後すみやかに
埋火葬許可証交付申請
手続き窓口:本籍地または死亡地、または届出人の住所地の役所
必要書類:埋火葬許可証交付申請書
期限:死亡後すみやかに
健康保険・年金関連
健康保険証の返還(高齢受給者証もあれば)
手続き窓口:役所または故人の勤務先
期限:死亡後すぐ
厚生年金の手続き(故人が加入者で未受給者の場合)
手続き窓口:年金事務所
期限:死亡後すぐ
国民年金加入状況変更の手続き(配偶者が故人の扶養になっていた場合)
手続き窓口:住所地の役所
期限:死亡後すぐ
健康保険の変更・加入(故人の扶養になっていた場合)
手続き窓口:住所地の役所
期限:死亡後すぐ
必要な手続きをリストアップし、迅速に対応することが大切です。不明な点がある場合は、役所や葬儀社に相談するとスムーズに進められます。”
死亡届の提出
“死亡届は死亡した事実を役所に報告し、戸籍に死亡を記載するための重要な手続きです。
提出先
本籍地
死亡した場所
届出人の住所地のいずれかの役所
必要書類
医師が作成した死亡診断書
届出人の印鑑 など
手続きの流れ
死亡診断書の作成
死亡を確認した時点で医師が死亡診断書を作成します。この用紙は死亡届とセットになっています。
死亡届の記入
必要事項を記入します。届出人は同居の親族、その他の同居者、家主など、戸籍法第87条に規定されている人が行います。
役所への提出
記入が完了した死亡届と死亡診断書を役所に提出します。これにより役所が死亡の事実を把握し、その人の戸籍に死亡が記載されます。
提出期限
死亡の事実を知った日から7日以内
これは戸籍法第86条で定められていますので、期限内に必ず提出しましょう。
届出人の規定
届出人は戸籍法第87条に規定されています。具体的には同居の親族、その他の同居者、家主など、順番が決められています。
この手続きは早めに行うことが重要です。役所に相談しながら進めるとスムーズです。”
埋火葬許可証の交付申請
“7日以内
提出先
死亡届を提出した役所
必要書類
役所に設置されている用紙など(※死亡届のみでよい役所もある)”
死亡後2週間以内にする手続き
“葬儀が終わり、一段落ついたところで、役所や年金の手続きが本格的に始まります。お勤めの方は忌引きが終わり仕事に戻ることが多いため、時間を効率的に確保しながら進める必要があります。特に期限のある手続きについては早めに対応しましょう。公共料金の名義変更やクレジットカードの解約なども、この時点で進めておくと良いでしょう。
期限:死亡後10日以内
手続きの種類        手続き窓口
年金受給権者死亡届(厚生年金受給者の場合)        年金事務所
加給年金額対象者不該当届(厚生年金被保険者で、受給要件を満たしていた場合)        年金事務所
期限:死亡後14日以内
手続きの種類        手続き窓口
年金受給権者死亡届(国民年金受給者の場合)        年金事務所
世帯主変更届(故人が世帯主の場合)        住所地の役所
介護保険資格喪失届        住所地の役所
その他手続き(故人の状況により異なる):
老人医療受給者の手続き
特定疾患医療受給者の手続き
身体障害受給者の手続き
児童手当の手続き
手続きの種類        手続き窓口
電気、ガス、水道の契約者名義変更        各契約先
新聞、インターネットの名義変更または解約        各契約先
携帯電話の解約        各契約先
クレジットカードの解約        各契約先
その他契約のサービス全て        各契約先
運転免許証の返納        警察署または運転免許センター
パスポートの返納        旅券事務所
役所の手続き
年金受給権者死亡届
提出先:年金事務所
期限:国民年金受給者は死亡後14日以内、厚生年金受給者は死亡後10日以内
加給年金額対象者不該当届
提出先:年金事務所
期限:死亡後10日以内
世帯主変更届
提出先:住所地の役所
期限:死亡後14日以内
介護保険資格喪失届
提出先:住所地の役所
期限:死亡後14日以内
その他手続き
提出先:役所など
期限:死亡後すみやかに
その他の手続き
電気、ガス、水道の契約者名義変更
提出先:各契約先
期限:死亡後すみやかに
新聞、インターネットの名義変更または解約
提出先:各契約先
期限:死亡後すみやかに
携帯電話の解約
提出先:各契約先
期限:死亡後すみやかに
クレジットカードの解約
提出先:各契約先
期限:死亡後すみやかに
その他契約のサービス全て
提出先:各契約先
期限:死亡後すみやかに
運転免許証の返納
提出先:警察署または運転免許センター
期限:死亡後すみやかに
パスポートの返納
提出先:旅券事務所
期限:死亡後すみやかに
これらの手続きを効率よく進めるために、計画を立てて行動しましょう。各手続きの必要書類や詳細は、事前に確認しておくとスムーズです。不明な点がある場合は、各窓口に相談することをおすすめします。”
健康保険の資格喪失・資格取得
“日本は国民皆保険制度を採用しているため、すべての人が何らかの健康保険に加入しています。被保険者が死亡した場合、その資格を失うため、資格喪失の届出が必要です。
提出期限
死亡後14日以内
提出先
加入している保険の種類によって異なります:
健康保険組合
協会けんぽ
国民健康保険
後期高齢者医療保険
必要書類
資格喪失届
被保険者証
死亡の記載がある戸籍など
手続きの流れ
死亡後翌日に資格喪失
死亡によって被保険者資格を失います。そのため、資格喪失の届出を行います。
扶養者の資格喪失
亡くなった方の扶養に入っていた方も資格を失います。このため、自分自身で新たに保険に加入する必要があります。
資格取得届の提出
扶養者であった方は、新たに自分自身の健康保険に加入するため、資格取得届を提出します。
手続きの種類と提出先
手続きの種類        提出先
被保険者資格喪失届        加入している健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療保険
資格取得届(扶養者が新たに加入する場合)        新たに加入する健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療保険
注意点
提出先が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
必要書類を揃え、期限内に手続きを行うことが大切です。
不明な点がある場合は、各保険の窓口に問い合わせて詳細を確認し、スムーズに手続きを進めましょう。”
年金受給権者死亡届(報告書)の提出
“年金を受給していた方が亡くなった場合、その旨を年金事務所に報告する必要があります。報告しないまま年金を受給し続けると不正受給となるため、必ず手続きを行いましょう。
提出期限
国民年金の場合:死亡後14日以内
厚生年金の場合:死亡後10日以内
提出先
年金事務所
必要書類
年金受給権者死亡届(報告書)
年金証書
死亡の記載がある戸籍など
手続きの流れ
死亡後の報告
年金を受給していた方が亡くなったことを、年金事務所に報告します。
国民年金の場合は14日以内、厚生年金の場合は10日以内に手続きを行う必要があります。
必要書類の準備
年金受給権者死亡届(報告書)
年金証書
死亡の記載がある戸籍など
年金事務所への提出
必要書類を年金事務所に提出します。
注意点
役所に死亡届を提出すると自動的に年金の手続きも済んでいると思われがちですが、これは全く別の制度であり、窓口も異なります。
生前にマイナンバーを年金事務所に登録している場合、役所と年金事務所が紐づいているため、この提出は不要となることがあります。ただし、未支給年金の届け出は必要です。
まとめ
手続きの種類 提出先 提出期限
年金受給権者死亡届(国民年金の場合) 年金事務所 死亡後14日以内
年金受給権者死亡届(厚生年金の場合) 年金事務所 死亡後10日以内
必要書類を揃えて、期限内に手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、年金事務所に問い合わせて確認しましょう。”
世帯主の変更
“世帯主が亡くなった場合、新たな世帯主を決めるために役所に届出が必要です。世帯とは「同じ住所に住んでいて、同一の生計を営んでいる家族ごとの単位」を指し、世帯主はその世帯を代表する人です。
提出期限
死亡後14日以内
提出先
役所
必要書類
住民異動届
本人確認書類など
手続きの流れ
新たな世帯主の決定
世帯主が亡くなった場合、新たな世帯主を決定します。
必要書類の準備
住民異動届
本人確認書類
役所への届出
新たな世帯主を決定したら、役所に住民異動届を提出します。
注意点
死亡も世帯主変更の理由に該当するため、必ず届出を行う必要があります。
提出期限内に手続きを行わないと過料が科せられる場合がありますので、早めに手続きを進めましょう。
まとめ
手続きの種類 提出先 提出期限 必要書類
世帯主変更届 役所 死亡後14日以内 住民異動届、本人確認書類など
必要書類を揃えて、期限内に手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、役所に問い合わせて確認しましょう。”
免許証・パスポート等の返納
“運転免許証やパスポートは、身分証明書として重要なものです。これらを返納することで、万が一の悪用リスクを避けることができます。返納しないことによる罰則はありませんが、早めに返納しておくことが安心です。想い出として残したい場合は、事前にその旨を伝えて対応してもらうこともできます。
提出期限
期限はないが、すみやかに
提出先
運転免許証:警察署または運転免許センター
パスポート:旅券事務所
必要書類
返納する免許証
返納するパスポート
死亡の記載がある戸籍
認印など
手続きの流れ
必要書類の準備
返納する免許証
返納するパスポート
死亡の記載がある戸籍
認印
提出先への連絡と返納
運転免許証は警察署または運転免許センター、パスポートは旅券事務所に提出します。
想い出としての返却依頼
想い出として残したい場合は、事前にその旨を伝えて確認します。運転免許証はパンチで穴を空けたり、パスポートは無効の確認手続きをした上で返却してもらえることがあります。
注意点
返納しないことによる罰則はありませんが、身分証明書として大切なものですので、悪用リスクを避けるためにも早めに返納することをおすすめします。
まとめ
手続きの種類        提出先        提出期限        必要書類
運転免許証の返納        警察署または運転免許センター        期限はないが、すみやかに        返納する免許証、死亡の記載がある戸籍、認印など
パスポートの返納        旅券事務所        期限はないが、すみやかに        返納するパスポート、死亡の記載がある戸籍、認印など
必要書類を揃えて、できるだけ早めに手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、各窓口に問い合わせて確認しましょう。”
公共料金等の手続き
“故人の契約に関する手続きは、名義変更または解約を行う必要があります。契約内容がすぐに分かるようにお客様番号などを確認してから連絡するとスムーズです。口座引き落としの場合、銀行口座の凍結による支払い停止に対処することも重要です。
提出期限
期限はないが、すみやかに
提出先
各契約先(電気、ガス、水道、携帯電話、インターネット、クレジットカードなど)
必要書類
手続きによって異なるが、死亡の記載がある戸籍等が必要な場合もある
手続きの流れ
契約内容の確認
お客様番号や契約状況を確認しておきます。
必要書類の準備
名義変更または解約に必要な書類を揃えます(死亡の記載がある戸籍等)。
各契約先への連絡
各契約先に連絡し、名義変更または解約の手続きを進めます。
口座引き落としの確認と変更
故人の口座から料金を引き落としていた場合、銀行口座の凍結によって支払いができないことがあります。その場合は引き落とし口座の変更を速やかに行います。
注意点
口座引き落としの未払いによる強制停止や解約に注意する。
オール電化や一社での複数契約がある場合、誤って解約すると利用できなくなる場合があるので、慎重に対応する。
まとめ
手続きの種類        提出先        提出期限        必要書類
名義変更または解約        各契約先        期限はないが、すみやかに        手続きによって異なるが、死亡の記載がある戸籍等が必要な場合もある
必要書類を確認し、できるだけ早めに手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、各契約先に問い合わせて詳細を確認しましょう”
死亡後1か月以内にする手続き
“役所や年金の手続きが一通り終わったら、本格的に「遺産相続手続き」に着手するタイミングです。まだ完了していない手続きがあれば、この時期に済ませて、遺産相続手続きに集中できるようにしましょう。
期限:死亡後1か月以内
手続きの種類
手続き窓口
雇用保険受給資格者証の返還受給手続きを行ったハローワーク”
雇用保険受給資格者証の返還
“期限
:1か月以内
提出先
:故人が受給していたハローワーク
必要書類
:雇用保険受給資格者証、死亡の記載がある戸籍など”
その他の手続き
“その他、該当する方のみが申請する手続きもありますので、自分が対象者かどうかをしっかり確認しましょう。
期限:該当者のみが申請
手続きの種類
手続き窓口
寡婦年金の請求
(国民年金のみに加入し、受給要件を満たした場合) 住所地の役所
中高年寡婦加算の請求
(遺族厚生年金受給対象者のうち、要件を満たした場合)住所地の役所(状況により異なる)”
寡婦年金の請求
“寡婦年金は、夫を亡くした妻が60歳から65歳の間に限って支給される年金です。これは妻自身の年金が65歳から支給開始されるまでの繋ぎとして支給されるものです。該当する方は忘れずに申請しましょう。
提出期限
夫を亡くした妻が60歳から65歳の間
提出先
役所
必要書類
亡くなった人のマイナンバーまたは年金手帳
請求する人のマイナンバー
請求する人の本人確認書類
請求する人の年金手帳
印鑑
受取口座通帳
手続きの流れ
必要書類の準備
上記の必要書類を揃えます。
役所への提出
役所にて寡婦年金の申請手続きを行います。
寡婦年金の受給
申請が受理されると、60歳から65歳の間、寡婦年金を受給することができます。
注意点
申請を忘れずに行うことが重要です。
寡婦年金は60歳から65歳までの期間に限られるため、該当する年齢に達したら早めに申請しましょう。”
2.死亡後の手続きで時効が発生する手続き一覧表
以下の手続きには時効があります。先延ばしにせず、気付いたときに手続きをしましょう。ここでは、時効が2年のもの、3年のもの、5年のものに分けてご紹介します。

親や家族が亡くなった後の手続き一覧 葬儀から銀行、相続、税金まで解説

1. 親や家族が亡くなった直後から葬儀、初七日までの手続き
“親や家族が亡くなった場合、初七日までに以下の手続きを行う必要があります。
死亡診断書と死体検案書の受け取り
病院や医療機関から死亡診断書と死体検案書を受け取ります。
死亡届の提出と火葬許可証の取得
地方自治体の役所にて死亡届を提出し、火葬許可証を取得します。
親しい方々への訃報の連絡
親しい友人や知人、親族に亡くなったことをお知らせします。
葬儀社との連絡と打ち合わせ
地域の葬儀社に連絡し、葬儀の日程や内容について打ち合わせを行います。
葬儀の手続きと初七日の準備
葬儀の詳細な手続きを進め、初七日の準備を整えます。
これらの手続きは、亡くなった後すぐに始めることが重要です。”
1-1. 死亡診断書・死体検案書の受け取り(すみやかに)
“親や家族が亡くなった際には、すぐに病院から「死亡診断書」を受け取るよう手配しましょう。事故死や突然の死亡の場合には、警察に連絡して、検視後に「死体検案書」を取得する必要があります。
通常、死亡診断書は、死亡の当日か翌日に受け取れます。後の手続きで必要になることもあるため、必ずコピーを取って保管しておきましょう。”
1-2. 死亡届の提出(7日以内)と火葬許可証の受け取り
“死亡診断書や死体検案書を受け取ったら、「死亡届」に必要事項を記入し、それと共に「火葬許可申請書」を役所に提出しましょう。これらの書類を提出することで、役所から「火葬許可証」が交付されます。
【死亡届の提出期限】
死亡を知った日から7日以内に提出してください。期限内に提出しない場合、5万円以下の過料が課せられることがあります。
【提出先】
以下のいずれかの市区町村役場に提出してください。
亡くなった人の死亡地の市区町村役場
亡くなった人の本籍地の市区町村役場
届け出をする人の所在地の市区町村役場”
1-3. 訃報の連絡(すみやかに)
訃報の連絡は迅速かつ確実にするために、電話が最も適しています。故人と深い縁がある人には、最初に亡くなったことを伝え、葬儀の日時や場所が決まったら再度連絡しましょう。一方で、他の方々には訃報と葬儀の情報を同時にお伝えします。
1-4. 葬儀社へ連絡、打ち合わせ(すみやかに)
“葬儀の準備を始めるために、まず葬儀社に連絡して打ち合わせを行いましょう。事前に葬儀社を決めておくことが理想的です。もしまだ決まっていない場合は、病院から紹介を受けるか、自分で早めに探して連絡を取ることをおすすめします。
また、死亡届や火葬許可証の提出に関しては、多くの葬儀社が代行してくれるので、一度相談してみると良いでしょう。”
1-5. 葬儀の手続きと初七日
“火葬許可証を葬儀社に渡し、葬儀を行いましょう。葬儀とは一般的に通夜、葬儀式、告別式、火葬までを含む言葉です。初七日は、亡くなってから7日目の法要のことですが、葬儀と一緒の日に済ませることが多くなっています。
なお、葬儀の費用を誰が払うかは法律の取り決めはありませんが、一般的に喪主が負担します。香典は喪主のものとなり、通常は葬儀代にあてることになります。
お骨はお墓に入れますが、まだお墓ができていない場合にはお墓が完成するまでお骨を家で保管します。お墓を管理する親族がいない場合は、お寺や霊園などがお骨を管理、供養する「永代供養」という方法があります。
なお、このような一般的な葬儀ではなく、家族葬や、火葬のみを行う直葬といった形式も増えています。”
2. 親や家族の葬儀後の公的手続き
“ここでは、親や家族の葬儀後に必要となる公的手続きをご紹介します。
年金受給停止(10日または14日以内)
健康保険の資格喪失届(5日または14日以内)
介護保険資格喪失届(14日以内)
住民票の世帯主変更届(14日以内)
雇用保険受給資格者証の返還(1カ月以内)
国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
埋葬料請求(2年以内)
葬祭費(2年以内)
高額医療費の還付申請(2年以内)
遺族年金の請求(5年以内)
故人の未支給年金の請求(5年以内)
これらの手続きを忘れずに行いましょう。”
2-1. 年金受給停止(10日または14日以内)
“亡くなった方が年金を受け取っていた場合は、早めに年金事務所に連絡して年金の受給停止手続きを行いましょう。手続きを怠ると、本来受給すべきでない年金を受け取ってしまうことになります。
【手続きを行う場所】
年金事務所
年金相談センター
【必要書類】
年金受給権者死亡届(報告書)
年金証書
死亡の事実を証明できる書類(死亡診断書のコピーや戸籍抄本など)
【提出期限】
国民年金の場合:死亡後14日以内
厚生年金の場合:死亡後10日以内
なお、マイナンバーが登録されている場合は、役所に死亡届を提出することで年金事務所に情報が共有されるため、受給停止の手続きは不要です。ただし、未支給年金の届け出は別途必要となります。”
2-2. 健康保険の資格喪失届(5日または14日以内)
“亡くなった方の健康保険証は返却する必要があります。
【国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合】
提出先:市区町村役場
期限:死亡後14日以内
【健康保険の場合】
提出先:年金事務所(会社が退職手続きと一緒に行ってくれることが多い)
期限:死亡後5日以内
これらの手続きを忘れずに行いましょう。”
2-3. 介護保険資格喪失届(14日以内)
“故人が65歳以上、または40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合、介護保険の資格喪失手続きが必要です。故人の住民票のある市区町村役場に、介護保険の資格喪失届を提出します。
【手続きを行う場所】
市区町村役場
【必要書類】
介護保険証
介護保険資格喪失届
【提出期限】
死亡後14日以内
忘れずに手続きを行いましょう。”
2-4. 住民票の世帯主変更届(14日以内)
故人が世帯主だった場合、同居人が新たに世帯主になるためには、市区町村役場で住民票の「世帯主変更届」を提出する必要があります。死亡届を提出すると住民登録は抹消されるため、抹消届は不要です。
【手続きを行う場所】
市区町村役場
【提出期限】
死亡後14日以内(遅れると5万円以下の過料が発生する可能性があります)
遅れないように手続きを行いましょう”
2-5. 雇用保険受給資格者証の返還(1カ月以内
“亡くなった方が雇用保険を受給していた場合、受給資格者証の返還が必要です。
【提出先】
雇用保険を受給していたハローワーク
【提出期限】
死亡後1か月以内
忘れずに手続きを行いましょう。”
2-6. 国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
“死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を一定期間以上納めていた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに死亡した場合に、遺族に支給されます。金額は年金への加入期間によって異なり、12万~32万円です。ただし、遺族基礎年金を受け取る場合は、死亡一時金は支給されません。
【申請先】
市区町村役場
年金事務所
年金センター
【必要書類】
死亡した人の年金番号を明らかにする書類
死亡した人と申請者の関係がわかる戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し
死亡した人の住民票除票
申請者の世帯全員の住民票
振込用の銀行預金通帳
【申請期限】
死亡日の翌日から2年以内
忘れずに必要書類を準備し、期限内に申請を行いましょう。”
2-7. 埋葬料請求(2年以内)
“亡くなった方が健康保険の被保険者であった場合、「埋葬料」を請求できます。金額は5万円です。
【提出先】
加入している健康保険組合または協会けんぽ
【必要書類】
健康保険埋葬料請求書
健康保険証
死亡診断書(コピー可)
葬儀費用の領収証など
【申請期限】
死亡日の翌日から2年以内
必要書類を揃えて、期限内に提出しましょう。”
2-8. 葬祭費請求(2年以内)
“亡くなった人が国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入していた場合、遺族は市区町村へ「葬祭費」の請求ができます。葬祭費の金額は1~7万円で、ご家族の状況や市区町村によって異なります。
【提出先】
亡くなった人が住んでいた市区町
【必要書類】
・故人の健康保険証
・申請者の本人確認書類、印鑑
・葬儀費用の領収証
【期限】
葬儀から2年以内”
2-9. 高額医療費の還付申請(2年以内)
“親や家族が亡くなる前に入院などをしていて、高額な治療費を負担した場合には、「高額医療費」の還付請求ができます。
【申請先】
加入している健康保険組合
協会けんぽ
市区町村
【必要書類】
医療費の明細書
【申請期限】
医療費支払いから2年以内
必要書類を揃えて、期限内に申請を行いましょう。”
2-10. 遺族年金の請求(5年以内)
“配偶者が亡くなった場合、「遺族年金」を受給できるケースがあります。そのためには、年金事務所に遺族年金の申請を行う必要があります。申請しないと遺族年金は支払われないので、早めに申請を行いましょう。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、家族の構成や収入によって支給の有無が決まります。例えば、遺族基礎年金は亡くなった方によって生計を維持されていた子のある配偶者、または子に支給されます。子のある配偶者は「79万5000円+子の加算額」(年額)を、子が18歳に到達する年度末まで受け取れます。生活を支えるための非常に大きな金額となりますので、忘れずに申請しましょう。
【手続きを行う場所】
年金事務所
【必要書類】
年金手帳(故人および請求者のもの)
戸籍謄本
世帯全員分の住民票の写し
死亡した人の住民票の除票
請求者の収入を確認できる書類
子どもの収入を確認できる書類
死亡診断書のコピー
振込先の通帳
印鑑
【請求期限】
死亡後5年以内
必要書類を揃え、期限内に申請を行いましょう。”
2-11. 故人の未支給年金の請求(5年以内)

相続手続きの代行は誰に依頼するべき? 代行サービスの費用相場と選ぶ際の注意点

相続手続きの代行サービスとは
相続手続きは手間がかかる
相続手続きを自分で行うことは非常に手間がかかります。遺言書の確認から始まり、相続人の調査や遺産分割協議書の作成まで、正確に進める必要があります。自分たちだけで対応すると、ミスが発生しやすくなる可能性があります。
相続手続きの代行を依頼するメリット
“専門家に相続手続きの代行を依頼することで、簡単かつ正確に相続手続きを進めることができます。自分で対応する手間が省けるだけでなく、ミスも防ぐことができます。
相続手続き代行サービスは、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家によって提供されています。また、銀行でも相続代行サービスを利用できる場合があります。”
相続まるごと代行サービスとは
“最近では「相続まるごと代行サービス」を提供する専門家が増えてきました。このサービスは、相続人調査や遺産調査、遺産分割協議書の作成、名義変更などの手続きを一括で依頼できるものです。
これにより、各種専門家への個別対応や契約の手間が省けます。相続まるごと代行サービスを提供している専門家としては、特に司法書士事務所が多く見られます。”
費用相場
司法書士事務所が提供する相続まるごと代行サービスの費用相場は、20~50万円程度です。しかし、手続きを行う機関の数や相続人の数が増えると、料金が高くなる傾向があります。
銀行の相続まるごと代行サービスについて
信託銀行でも相続まるごと代行サービスを提供している場合があります。しかし、司法書士事務所と比較すると、費用がかなり高くなる傾向があります。したがって、金融機関に依頼するよりも、司法書士に依頼するほうがリーズナブルと言えるでしょう。
代行サービスを選ぶ際の注意点
各専門家で対応できる範囲が異なる
“相続手続きを代行する専門家にはさまざまな種類があります。
専門家の種類によって対応可能な業務範囲が異なるため、範囲外の業務を依頼しても対応してもらえないことがあります。相続手続きを依頼する際には、どの専門家がどのようなサービスを提供しているのかを事前に確認することが重要です。
専門家の種類を調べて個別に相談するのが手間に感じる場合は、相続まるごと代行サービスや他の専門家と提携している事務所に依頼することをお勧めします。この方法なら、一度の依頼で複数の手続きをスムーズに進めることができます。ただし、個別に依頼する場合よりも費用がやや高くなる可能性があります。
依頼前には、手続きにかかる費用も十分に確認しておきましょう。”
実績が高く信頼できる専門家を選ぶ
“司法書士や弁護士といっても、それぞれに得意分野があります。相続手続きに慣れていない専門家に依頼すると、スムーズに進めることが難しいかもしれません。日常的に相続業務に取り組み、豊富な実績があり、親身に対応してくれる専門家を選ぶことが大切です。
また、費用が安いからといって、それが必ずしも良い選択とは限りません。安価なサービスであっても、質が伴わなければ意味がありません。”
銀行の丸ごとサービスと司法書士の丸ごとサービスは異なる
“相続まるごと代行サービスを利用する際には、注意が必要です。同じ「まるごとサービス」でも、司法書士と銀行では大きな違いがあります。
司法書士に依頼する場合、直接専門家に依頼するため、中間マージンが発生せず、費用が抑えられます。一方で、銀行を通じて依頼する場合、銀行の高額な手数料が加算されるため、費用が高くなる傾向があります。
司法書士と銀行の相続まるごと代行サービスを比較すると、費用に2倍、3倍以上の差が生じることも珍しくありません。費用を抑えて相続まるごと代行サービスを利用したい場合は、司法書士事務所を選ぶのが賢明です。”
相続手続きの流れ
弁護士、司法書士、税理士、行政書士によって、相続手続きで対応可能な業務内容は異なります。各専門家が代行できる内容を紹介する前に、まずは相続手続きの流れをわかりやすく解説します。
遺言書の確認
まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書は自宅や貸金庫に保管されていることが多いです。公正証書遺言は公証役場で検索することができ、自筆証書遺言が法務局で保管されている場合は、法務局で確認してもらえます。
相続人、相続財産の調査
被相続人(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得して、相続人を確認しましょう。同時に、遺産の種類と内容についても調査し、確定させる必要があります

相続手続きは司法書士に依頼できる?費用相場やメリット、デメリットをご紹介

相続手続きで司法書士に依頼できること
“司法書士に依頼する相続手続きといえば、相続登記(相続した不動産の名義を変更する手続き)が代表的ですが、司法書士はこれに限らず、相続人調査から遺産分割協議書の作成、預貯金の解約払戻し、有価証券の名義変更など幅広く対応することができます。司法書士が相続人から依頼を受けて行う代表的な相続手続きは以下のとおりです。
相続人調査(戸籍謄本などの収集)
相続財産調査(評価証明書や残高証明書の取得、信用情報機関への債務照会など)
相続放棄の申述書作成(書類作成のみ。家庭裁判所への申立を代理することはできない)
相続財産管理人選任の申立書作成(書類作成のみ。家庭裁判所への申立を代理することはできない)
遺産分割協議書の作成(相続財産に不動産が含まれる場合のみ)
相続登記(相続や遺贈を原因とする所有権移転登記)
預貯金の解約払戻し
株式、投資信託など有価証券の名義変更
相続手続きに関する相談やアドバイス(相続に関する紛争解決や他の相続人との交渉はできない)
また、遺言や任意後見契約、家族信託契約など生前対策のサポートも行うことができます。相続が発生した後はもちろん、相続に備えた準備段階でも幅広くサポートできる点が司法書士の特徴です。”
司法書士に相続手続きを依頼したときの費用相場
“司法書士に相続手続きを依頼する際の費用は、「実費」と「報酬」の2つに大別されます。
相続手続きにおける実費は、戸籍謄本など公的証明書の発行手数料や相続登記の登録免許税などが該当します。これらは自分で手続きを行った場合でもかかる費用で、金額(算定根拠)は一律に決まっています。
一方、司法書士の報酬は自由に定めることができるため一律の規定は存在しません。しかし、依頼者に対してあらかじめ報酬額の算定方法や報酬の基準を示すことが法律で義務付けられているため、事務所ごとに報酬規定表を設けているのが一般的です。依頼する前に見積りを出してもらうか、報酬規定表を提示してもらい、何をどこまで依頼したら報酬がいくらになるのかを確認した上で依頼することが重要です。
以下は、相続手続きについて私が勤める司法書士法人リーガル・フェイス(当事務所)と、インターネットでランダムに検索した2つの事務所の報酬基準を一覧にしたものです(いずれも税別)。
遺言作成サポート
当事務所:6万円~
A事務所 :10万円~
B事務所 :6万円~
相続人調査(戸籍謄本などの収集)
当事務所:2万円(10通まで)
A事務所 :3万円
B事務所 :3万5000円~
相続放棄の申述書作成
当事務所:4万円~
A事務所 :5万円~
B事務所 :4万円~
相続登記
当事務所:6万5000円~
A事務所 :4万円~
B事務所 :5万円~
預貯金の解約払戻し
当事務所:5万円(1金融機関につき)
A事務所 :3万円(同上)
B事務所 :4万円(同上)
遺産分割協議書の作成
当事務所:1万5000円~
A事務所 :4万円~
B事務所 :2万円~
遺産承継業務(相続手続きセット料金)
当事務所:30万円~
A事務所 :30万円~
B事務所 :財産価格の1%
司法書士の報酬は、地域によって相場が変わりますし、相続人の人数や不動産の数、相続関係の複雑さなど、事案によっても異なります。あくまでも目安として捉えてください。”
司法書士に相続手続きを依頼したときの費用事例
“では、相続手続きをまとめて司法書士に依頼した場合、具体的にどのくらいの費用がかかるのか、以下の事例をもとに見ていきましょう。
亡くなった人: 朝日太郎さん
相続人: 長男、長女、二男
相続財産: 計4500万円。内訳は自宅不動産(土地1500万円、建物500万円)、預貯金(A銀行1000万円、 B銀行1000万円)、上場株式(C証券会社500万円)
相続税: 基礎控除額(3000万円+600万円×3=4800万円)の範囲内なのでかからない
遺産分割協議の内容: 長男が不動産を単独で取得し、預貯金および上場株式を長女と二男が2分の1ずつ(各1250万円)取得することで合意
司法書士への依頼内容: 3人とも仕事が忙しく手続きを進めることができないため、必要な相続手続きを一括して依頼
当事務所の報酬規定をもとに、相続手続きを一括して依頼した場合の内容と費用は以下の通りです。
実費と報酬の合計で約65万円前後になります。報酬だけでも決して安い金額ではありませんが、相続人の3人で負担すると1人あたり約21万円でひととおりの手続きを代行してもらえることになります。”
司法書士に相続手続きを依頼するメリット
“司法書士に相続手続きを依頼する利点としては、主に以下の3つが挙げられます。
中立的な立場で適切なアドバイスをしてくれる
手間を省き、確実に手続きを進めてくれる
一部の相続人に負担が集中しない”
. 中立的な立場で適切なアドバイスをしてくれる
司法書士は特定の相続人の代理人となって他の相続人と交渉したり、特定の相続人が有利になるようなアドバイスをしたりすることはできません。相続人全員に対して中立的な立場で業務を行います。そのため、相続人全員の疑問や不安に対応し、円滑に相続手続きが進むように適切なアドバイスを提供することができます。
手間も少なく確実に手続きしてもらえる
相続手続きをまとめて司法書士に依頼すれば、相続人自身が動くことはほとんどなくなります。相続手続きでは役所や金融機関に何度も足を運ぶ必要がありますが、これらの窓口は平日の日中しか対応してくれないことがほとんどです。仕事や家事で忙しく、手間をかけたくない場合は、司法書士に依頼する方が良いかもしれません。
一部の相続人が負担を抱え込むことがない
司法書士などの専門家に依頼しない場合には、相続人全員が協力して相続手続きを行います。しかし、実際には相続人のうち誰か一人が代表者として役所や金融機関の窓口に出向くことが多くなります。その結果、一部の相続人だけが手続きの負担をすべて負うことになり、他の相続人に対して不満が生じ、紛争のきっかけになるケースもあります。第三者である司法書士が手続きを行うことで、円滑に相続手続きが進むこともあるのです。
司法書士に依頼するときの注意点
前述のとおり司法書士は相続手続きにおいて幅広く業務を行うことができますが、下記のように司法書士では対応できないケースも存在します。
相続人間に争いがある場合は対応できない
司法書士はすべての相続人に対して中立的な立場で相続手続きを行うため、特定の相続人の利益のために他の相続人と交渉したり、特定の相続人が有利になるような助言をしたりすることはできません。
たとえば、3人兄弟の長男から「亡くなった父名義の土地を自分の名義にしたい」と相続登記の依頼を受けた場合、この相続登記には「土地は長男が単独で取得する」という内容の遺産分割協議書に相続人全員の署名捺印が必要です。長男からの依頼に基づいて遺産分割協議書を作成することはできますが、弟2人に対して署名捺印をするように司法書士が説得や交渉を行うことはできません。
相続人同士が不仲で話し合いに応じてくれなかったり、主張が完全に対立していたりする場合には、はじめから弁護士に相談すべきでしょう。”
相続税申告についての相談には対応できない
相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税の申告が必要となります。この申告を相続人に代わって行うのが税理士です。相続税の申告には、相続財産の評価方法や小規模宅地の特例措置など、専門的な知識が必要となります。
相続によりどれだけの税金を納める必要があるかは、相続手続きの上で重要なポイントです。相続税の申告が必要な場合や申告の要否がすぐに判断できない場合には、まずは税理士に相談することをお勧めします。”
ほかの士業の独占業務も行えない
“自動車の名義変更や許認可の承継は行政書士、社会保険手続きは社会保険労務士、特許権や著作権に関する手続きは弁理士というように、業務を行うことができる専門家が法律で決まっている場合があります。これらの業務を司法書士が行うことはできません。
司法書士が対応できる相続手続きの範囲と対応できない範囲については、下記の図版「相続について各士業が対応できる業務内容」も参考にしてみてください。”

遺産相続手続きをしなかったらどうなるのか?

遺産相続手続きには期限があります
“葬儀や法要だけでも大変なのに、ご遺族にはまだまだ行わなければならない相続手続きが残っています。銀行、市役所、年金の手続き、病院の入院費や葬儀の支払いなど、多くの手続きをこなす必要があります。
遺産相続手続きの期限について
急がないと間に合わない!? 遺産相続手続きには期限があります。
ひとつひとつの遺産相続手続きの流れは、こちらから確認してください。
これだけたくさんの手続きがあると、考えるだけで気持ちが滅入ってしまいます。
これらをすべて放置したら、どうなるのでしょうか?”
遺産相続手続きをしないで放置しても、ただちにペナルティはない
“結論から申し上げますと、相続手続きを放置しても特に罰則やデメリットはありません。(不動産相続登記は例外で、罰則規定が設けられています)
令和6年(2024年)4月1日より、相続登記が義務化され、期限が設けられました。詳しくはこちらをご参照ください。
遺産が減少したり、国に取り上げられたりすることはないため、しばらく放置しても思い立ったときに取り組んでも特に問題はありません。
また、年金や役所手続きなどには、7日以内や14日以内などの期限が定められていますが、これらの期限を過ぎても問題なく手続きができます。
※相続放棄の申請と相続税の申告については、期限に注意が必要です。
ただし、いつかは手続きを行わないと、亡くなった方の名義のままで凍結された状態が続きます。遺産相続手続きを放置して数年が経過するうちに、共同相続人の中に亡くなる方や、認知症などを発症する方が現れると、相続関係がさらに複雑化し、手続きも煩雑になります。
何より、故人が築かれた資産をいつまでも故人の名義のまま凍結させるのは、亡くなった方への礼儀として良くありません。先人を弔い、敬意を表するためにも、きちんと相続手続きを完了させることがご供養につながると私は考えています。”
銀行預金を手続きせずに放置すると・・・
“遺産相続が始まると、銀行預金は凍結され、預金の入出金ができなくなります。
凍結を解除するためには、戸籍謄本で相続人を確定し、相続人全員の署名と実印、印鑑証明書を揃えて所定の手続きを行う必要があります。これを行わない限り、預金はいつまでも凍結されたままです。
そのまま長期間、例えば10年間、放置するとどうなるのでしょうか?”
2019年より休眠預金等活用法が開始
“正確には、「2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引がない預金等」が、休眠預金として取り扱われます。
相続発生の時期ではなく、最後の入出金等が行われた日が基準です。
10年が経過して休眠預金となると、預金保険機構へ移管され、民間公益活動に活用されます。”
休眠預金になっても、きちんと相続手続きをおこなえば、払戻しを受けることができる
“預金保険機構で民間公益活動に活用されるといっても、移管されたすべての休眠預金等がそのまま活用されるわけではありません。
預金保険機構では、将来の引き出しに備えて、その5割が準備金として積み立てられています。
所定の手続きを行えば、払戻しを受けることが可能です。”
2009年1月1日以前から入出金等のない口座は休眠預金にならない
“既に10年以上取引がない口座は、休眠預金等活用法の対象外となります。
休眠預金について、より詳しい情報は金融庁発行のQ&Aをご参照ください。”
債権の時効は10年
“銀行預金とは、金融機関に対する預金債権のことです。
この債権を行使しない、すなわち金融機関に対して預金の払い戻しを請求しない場合、その預金債権は10年で時効消滅します。(場合によっては5年の場合もあります。)
口座名義人が死亡し、遺産相続人が相続手続きを行わないまま、遺産分割協議が進まずに放置されたとしても、10年を経過すると預金債権が消滅する恐れがあります。
ただし、実務上は10年経過後でも、きちんと手続きをすれば金融機関が支払いに応じてくれるケースが多いです。
皆様がよく心配されるように、国に没収されることは今のところありません。
しかし、凍結されたままの預金額は相当な金額にのぼるといわれており、今は銀行の内部に眠っていますが、いずれ法律が改正され、国に没収される恐れがないとも言えません。
また、10年経過後の支払いに応じるかどうかは、各金融機関によって判断が異なる場合があります。
支払ってもらえる場合でも、時間が経過しているため手続きが複雑になり、銀行が支払いに応じない場合には、文句を言えない可能性もあります。”
いつ、銀行口座は凍結されるのか
“預金者の死亡により、口座は凍結されます。これは特定の相続人の不正行為により他の相続人の相続権が侵害されないようにするためですが、実際のところ、金融機関が相続人同士の争いに関与したくないという側面もあるのではないかと個人的には感じています。
口座が凍結される時期は、金融機関が預金者の死亡を知ったときです。
役所に死亡届を提出しても、その情報は金融機関と連携していないため、すぐに口座が凍結されることはありません。相続人もしくは関係者が金融機関に預金者の死亡を通知したときに、初めて口座が凍結されます。
なお、地域によっては住民の死亡が新聞に掲載されることがあり、その地域の金融機関は日々、新聞の死亡欄をチェックして、口座保有者の名前があれば、それをもって口座を凍結することもあります。”
不動産登記をせずに放置すると・・・
不動産登記は3年以内
“これまでは、故人の名義のまま何十年が経過しても、実務上は何のペナルティもなく名義変更の手続きが可能でした。
しかし、その結果、故人名義のままの不動産が増えてしまったため、相続登記は3年以内に行うよう義務化されました。長年、祖父の名義のまま放置されていた不動産の相続登記をしようとしたら、いとこやおじ・おばを含めて10人以上が相続人になっていた、というのは現実によくあるケースです。
また、明治時代や大正時代に登記された抵当権が今も残っているというケースもあります。
この場合、抵当権者が銀行などではなく個人であることが多く、その抵当権者がすでに亡くなっている場合、その相続人を探して印鑑をもらわなければ、抵当権を抹消できないというケースもあります。”
母に前夫との間の子がいるケース
“自宅を亡くなった父親名義のまま放置するケースは非常に多いです。その間に母親が亡くなり、兄弟の中にも先立つ者が出てくることがあります。そうなると、自宅の名義変更は非常に困難になります。
例えば、10年前に父が死亡した場合、母と本人がそれぞれ2分の1の持分を相続します。しかし、自宅の登記をせずに母が亡くなると、母の2分の1の持分は本人と、母の前夫との間の実子に相続されます。もしその実子がすでに死亡していると、さらに複雑になります。
実子が成人してお子さんがいる場合、その相続権は代襲され、さらにその子が未成年であれば、手続きはさらに複雑化します。考えるだけでも気が遠くなりますね。
このケースでは、父が亡くなった時点で息子と母が遺産分割協議を行い、不動産の名義を息子が相続することに決めて手続きを行っていれば、何の問題もなかったということになります。”
相続人が未成年者のとき
“未成年者は遺産分割協議書にサインすることができません。通常は親権者が未成年者に代わって署名捺印を行いますが、遺産相続では、未成年者と親権者が共同相続人となるケースがよくあります。
この場合、未成年者と親権者の利益が相反する(利益相反行為)ため、親権者は未成年者を代理することができません。
このような場合、遺産分割協議の際に未成年者を代理する特別代理人を家庭裁判所に選任してもらう手続きが必要です。
相続発生時に未成年者がいない場合でも、相続手続きを放置しているうちに相続人の一人に不幸があり、その子が未成年者で代襲相続人として登場するケースでは、上記の家庭裁判所の手続きが必要となり、遺産相続が複雑になることが想定されます。”
相続人が認知症のとき
“相続人の中に認知症などを患い、正確な判断ができない方がいるケースもあります。
その場合、その方は自分で遺産分割協議書にサインできないため、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人が一度選任されると、認知症の方が回復して健常者になるか、亡くなるまで成年後見人を解任することはできません。その責任も非常に重いため、申し立てから選任までに半年から1年程度かかることがよくあります。
相続発生時に認知症などを患う方がいなくても、相続手続きを放置しているうちに、相続人の一人が認知症を発症するケースでは、上記の家庭裁判所の手続きが必要となり、遺産相続が複雑になることが想定されます。”
子どものいないご夫婦が相次いで他界されるケース
お子さんがいないご夫婦で、ご主人が亡くなると、奥様とご主人の兄弟姉妹・おいめいが共同相続人となるケースがよくあります。
相続手続きを主導する方がいなかったり、遺産状況がよくわからなかったりすると、遺産相続が進まず、そのまま奥様も亡くなってしまうことがあります。
そうなると、奥様の兄弟姉妹とおいめいまでが新たな共同相続人として登場し、相続関係はさらに複雑化し、相続手続きも煩雑になります。
当センターに寄せられるご相談でも、「あのときにきちんと手続きをしておけば」と後悔されるケースが非常に多く見受けられます。”
行方不明で、どうしても連絡が取れないご相続人がいるとき
“この場合、なんとか連絡を取る以外に方法はありません。
戸籍の附票や住民票からその方の現住所を確認し、お手紙やご訪問などで連絡を取ることになります。
もし、住民票記載地にその方がいらっしゃらないことが明らかな場合、法律上の行方不明者となりますので、裁判所の関与が必要になります

相続手続きの費用相場はどのくらい? 専門家に依頼したケースを徹底解説

相続手続きは非常に複雑で、多くの作業が必要です。また、謄本などの取得には手数料がかかります。「忙しくて相続手続きの時間がない」「手順や方法が分からず時間がかかる」という方も多く、その場合は専門家や親族に依頼することができます。ただし、弁護士や税理士など、相談内容に応じて依頼する専門家が異なります。今回は、相続手続きに必要な費用について解説し、専門家に依頼するメリットと費用の目安、親族に委任する際の注意点について説明します。
相続手続きの一覧と流れ
“相続が発生した際には、以下の手順で手続きを進める必要があります。期限がある手続きもあるため、注意が必要です。
【相続手続きの一般的な流れ】
金融機関、年金、保険、公共料金など各種届出
遺言書の有無の確認
遺言書が見つかった場合、家庭裁判所での検認手続き
相続人調査と相続財産調査
相続放棄や限定承認の検討
遺産分割協議
遺産分割調停、信販
相続税の申告、納税
遺留分侵害額請求
不動産の相続登記
その他必要な手続き
上記は一般的な流れであり、状況によりさらに別の手続きが必要となる場合もあります。それぞれに「必要書類」があり、郵送で大量の戸籍謄本を取り寄せたり、家庭裁判所への申立が必要になったりと手間がかかります。自分ですべてを終えるのは難しいと感じる方も少なくありません。以下に、相続手続きを時系列で図示したものを示します。
相続手続きを自分で行った場合の費用
“相続手続きは専門家に依頼せずに自分で行うことも可能です。この方法では専門家の費用を節約でき、実費のみで済ませることができます。自分で行う場合、主な費用は書類の取得費用です。特に相続人調査における戸籍謄本類(戸籍の全部事項証明書類)の取得費用がかさみます。また、住民票や印鑑登録証明書の取得にも費用がかかる場合があります。不動産登記を行う際には、固定資産評価証明書の取得も必要です。これらの書類を郵送で取り寄せる場合、郵送料も発生します。
それぞれの費用は以下の通りです。
戸籍謄本: 450円
改製原戸籍謄本、除籍謄本: 750円
住民票: 200~300円
印鑑登録証明書: 200~300円
固定資産評価証明書: 200~300円
1件の相続にかかる実費は数千円から2~3万円程度になるケースが多いです。ただし、自分で手続きを行うと非常に手間がかかります。戸籍謄本を集める際に抜け漏れが生じることもよくあるので、そのような間違いが起こらないよう慎重に対応しましょう。”
相続手続きは、専門家に依頼できる
相続手続きを自分たちで行う時間がない、方法がわからないという方は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの専門家に依頼することが可能です。依頼すべきケースや費用の相場について解説します。
相続手続きを依頼した方がいいケース
専門家に依頼することで、煩雑な相続手続きをスムーズに進めることができます。前述のように、期限がある手続きもあるため、以下のようなケースでは依頼を検討すると良いでしょう。
“【専門家に依頼した方が良いケース】
仕事が忙しくて相続手続きを行う時間がない
高齢などで相続手続きの方法がわからない
遺産分割協議で揉めてしまった場合(弁護士に遺産分割協議や調停の代理を依頼)
遺産分割協議はできたが、不動産登記だけお願いしたい場合(司法書士に不動産登記を依頼)
親族同士が疎遠であまり関わりたくない
相続放棄した方が良いのか自分では判断できない
遺留分請求をすべきか迷っている
相続財産が複雑で相続税の計算方法がわからない
専門家に依頼する方が良いかどうかは事案によって異なります。細かい案件の場合、依頼が必要ないケースもあります。また、金額だけでなく、相続人の「時間の節約」という観点も考慮する必要があります。専門家の種類によって依頼できる内容が異なるため、以下の図でそれぞれに依頼できる内容をご確認ください。”
弁護士に依頼できる手続きと費用の目安
“弁護士には以下のような相続手続きを依頼することができます。
【弁護士に依頼できる相続手続き】
遺言書の検認
相続放棄、限定承認
相続人調査
相続財産調査
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議、調停、審判の代理
遺留分侵害額請求の代理
預貯金使い込みの責任追及
遺言書の無効確認手続き
弁護士は法律の専門家であり、ほとんどの相続手続きに対応できます。ただし、「相続税に関する業務」と「不動産登記」は依頼できません。弁護士の特徴は「本人の代理人として活動できる」ことです。相続人間の遺産分割協議や調停、審判で揉めたときや遺留分侵害額請求をするとき(されたとき)には、必ず弁護士に依頼しましょう。
【費用の目安】
遺産分割調停の場合、着手金が20~60万円程度からで、遺産総額に応じて報酬金が発生する場合もあります。報酬金は依頼者が得た経済的利益の4~16%になるのが一般的です。また、相続放棄や遺産分割協議書の作成なら10万円程度で、その他の業務に応じて費用は変動します。”
税理士に依頼できる手続きと費用の目安
“税理士には相続税の申告手続きを依頼することができます。相続税の申告は税理士にしか依頼できません。多額の財産を相続し、できるだけ節税したい場合には、相続に詳しい税理士に相談しましょう。
【費用の目安】
費用は遺産総額に応じて変わります。おおよそ20万~50万円程度が目安ですが、各事務所によって費用体系が異なるため、事前に確認したり、複数の事務所を比較したりすることをおすすめします。”
行政書士に依頼できる手続きと費用の目安
“行政書士には以下のような相続手続きを依頼できます。
【行政書士に依頼できる相続手続き】
相続人調査
相続財産調査
遺産分割協議書の作成
車や株式の名義変更、預貯金解約払戻
行政書士は文書作成の専門家ですが、弁護士や司法書士に比べてできることが限られています。主に相続人調査、相続財産調査、車や株式、預貯金の名義変更などを依頼すると良いでしょう。費用は弁護士など他の専門家と比べて低めです。
【費用の目安】
他の専門家と比較して相場は低く、相続人調査、相続財産調査は5万~6万円程度、遺産分割協議書の作成は3万~5万円程度、預貯金や株式、車の名義変更は2万~5万円程度となっています。”
その他、発生する費用について
“専門家に依頼した場合、上記の他に実費や日当が発生します。日当は遠方への出張や移動があった場合にかかります。実費は、戸籍謄本の発行手数料や収入印紙、連絡用切手など手続きに必要な費用です。相続人の数が多いほど必要書類も増えます。
上記はあくまで目安です。初回相談が無料の事務所も多いので、実際に見積もりを出してもらい、比較するなどして信頼できる専門家に依頼するようにしましょう。”
親族に依頼する方法
相続手続きは親族にも依頼できます。その際には「委任状」を作成し、親族に渡してください。受け取った親族が委任状と必要書類を申請先の機関に提出すれば、預貯金の払戻しなどの各種手続きを進めることができます。
委任状の作成方法
委任状には委任事項を記載し、日付を入れて署名押印しましょう。たとえば、「〇〇に以下の預貯金解約払戻の手続きを委任します」と書いて、日付を入れて署名押印すれば完成します。
親族に依頼する場合、費用は発生するのか?
“一般的には、親族に手続きを依頼する場合、報酬は支払わなくても良いでしょう。親族から報酬を請求されることはあまりないと考えられます。
ただし、当事者間で報酬を支払う取り決めをすることも可能です。その場合の金額については特に決まりはありませんが、常識的な範囲で当事者が納得する金額にするのが良いでしょう。たとえば、高齢の親が子どもに委任する際に、お小遣い程度の報酬を渡すなどです。家庭の事情により、金額はケースバイケースで異なると考えられます。
手続きにかかる実費(書類取得費用など)は「委任した人」が負担すべきです。委任された親族はあくまでサービスとして手続きを代行しているだけであり、本来費用を負担すべきは委任者だからです。”
 委任する際の注意点と予防策
“親族に委任する際の注意点とトラブルを避けるための予防策をご紹介します。
白紙委任状
親族に委任する際には、「白紙委任状」を渡さないことが重要です。白紙委任状とは、委任事項を明確に示さず「一任します」とする委任状です。委任事項を明確にしないと、受け取った親族が何に使うかわからず、借金をされたり保証人にされたりするリスクがあります。トラブルを防ぐために、「預貯金の払戻し」「不動産登記手続き」など、具体的な委任事項を示して委任状を作成しましょう。
親族に依頼するときのリスク
親族は相続手続きのプロではありません。信頼できる相手を選ばないと、いい加減な対応をされて手続きが進まない可能性があります。例えば、親が子どもに手続きを任せて安心していても、子どもが忙しくて手続きを放置するリスクがあります。また、子ども自身が手続きの方法がわからず困ってしまうケースも多いです。さらに、依頼された子どもが他の親族の反感を買い、トラブルに巻き込まれることもあります。士業(専門家)は「仕事」として相続手続きを代行しますが、親族は「親切心」で手伝う意識しか持っていないことが多いです。よりスムーズに相続手続きを終わらせるには、専門家に依頼する方が確実です。

相続手続きの代行は誰に依頼するべき?代行サービスの費用相場と選ぶ際の注意点

相続手続きの代行サービスとは

相続手続きの代行サービスは、相続に伴う煩雑な手続きを専門家が代行して行うサービスです。
これにより、相続人は自分で手続きを行う手間を省くことができ、専門家の知識と経験を活かしてスムーズに手続きを進められます。
司法書士、行政書士、税理士、弁護士などの専門家が、各々の専門分野で適切なサポートを提供すると思われがちですが、相続手続きの代行サービスを専門に行っている業者も存在します。。
 相続手続きは手間がかかる
相続手続きを自分で行うのは非常に労力がかかります。まず遺言書の発見から始まり、相続人の正確な調査、そして遺産分割協議書の作成も必要です。これらを自力で進めると、ミスが発生しやすくなります。
相続手続きの代行を依頼するメリット
“専門家に相続手続きを代行してもらうと、迅速かつ正確に手続きを進めることができます。自身で対応する必要がなく、手間も省け、ミスも防げます。
相続手続きの代行サービスは、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家が提供しています。また、銀行も相続代行サービスを提供している場合があります。”
相続まるごと代行サービスとは
“最近では、「相続まるごと代行サービス」を提供する専門家が増えています。これは、相続人調査、遺産調査、遺産分割協議書の作成、名義変更などの手続きを一括で依頼できるサービスです。
このサービスを利用することで、個々の専門家に別々に依頼する手間が省けます。特に、司法書士事務所がこの種のサービスを多く提供しており、手続きを一元管理できる点で便利です。”
費用相場
司法書士事務所が提供する相続まるごと代行サービスの費用は、一般的に20~50万円程度です。ただし、手続きの複雑さや相続人の数が増えると、料金も高くなる傾向があります。
銀行の相続まるごと代行サービスについて
信託銀行でも相続まるごと代行サービスを提供していることがよくあります。しかし、司法書士事務所に比べると費用が高めです。そのため、費用面では司法書士に依頼する方が経済的です。
代行サービスを選ぶ際の注意点
相続代行サービスを選ぶ際には、以下の点に注意することが大切です。
3-1. 各専門家で対応できる範囲が異なる
“相続手続きを依頼する専門家は複数あり、それぞれ対応できる範囲が異なります。範囲外の業務は受けてもらえないため、事前にどの専門家がどのサービスを提供しているか確認することが重要です。
複数の専門家に個別に相談するのが面倒な場合、相続丸ごと代行サービスや他の専門家と提携している事務所に依頼するのがおすすめです。これにより、ワンストップで手続きを進められるメリットがあります。ただし、費用は個別に依頼するより高くなることがありますので、事前に費用をしっかり確認しましょう。”
実績が高く信頼できる専門家を選ぶ
相続手続きを代行する専門家にはさまざまな種類がありますが、誰でも良いわけではありません。司法書士や弁護士でも得意分野が異なるため、相続手続きに精通している専門家に依頼することが重要です。実績が豊富で親身になって対応してくれる人を選ぶと良いでしょう。また、費用だけで選ぶのではなく、サービスの質も考慮することが大切です。安価でもサービスの質が低ければ意味がありません。
銀行の丸ごとサービスと司法書士の丸ごとサービスは異なる
相続まるごと代行サービスを利用する際には、提供者によって内容が大きく異なる点に注意が必要です。司法書士に直接依頼すると、中間マージンがかからず費用が抑えられますが、銀行を通じた場合、高額な手数料が発生します。その結果、同じサービスでも費用が2倍、3倍に膨らむことがあります。リーズナブルに利用したいなら、司法書士事務所を選ぶのが賢明です。
相続手続きの流れ
弁護士、司法書士、税理士、行政書士によって、相続手続きで対応できる内容が異なります。各専門家が代行できる業務内容を紹介する前に、まずは相続手続きの流れをわかりやすく解説します。
次に、簡単に相続の流れを説明します。
遺言書の確認
被相続人(亡くなった人)の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本類を取得して相続人を調べましょう。並行してどのような遺産があるかも調査して確定します。
 相続人、相続財産の調査
遺産が債務超過になっている場合などには相続放棄を検討しましょう。
相続放棄の検討
遺産が債務超過になっている場合などには相続放棄を検討しましょう。
遺産分割協議
相続人と遺産内容が明らかになったら、相続人全員で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議を行います。
相続手続き
不動産の名義変更や預貯金払い戻し、車や株式の名義変更などの相続手続きを行います。
相続税の申告納付
遺産額が相続税の基礎控除を超える場合、相続開始後10カ月以内に相続税の申告と納付をしなければなりません。基礎控除以内に収まる場合には相続税申告は不要です。
相続手続きを代行する専門家の種類と費用の目安
以下では相続手続きを代行してくれる専門家の種類と費用の目安をご紹介します。相続手続きを依頼する専門家を探す際の参考にしてみてください。
弁護士が代行できること
“弁護士は税務と不動産登記以外の多くの相続手続きに対応できます。例えば、相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議書の作成、相続放棄、遺留分侵害額請求などです。
トラブル解決業務を扱えるのは弁護士のみであり、遺産分割協議で争いが発生した場合には弁護士の依頼が必要です。
費用相場
弁護士に依頼すると、他の専門家に比べて費用が高めになることがあります。相続放棄の依頼では、司法書士の3~5万円に対し、弁護士では5~10万円が相場です。
遺産分割調停の依頼では、着手金が20~60万円、報酬金は依頼者の得た経済的利益の4~16%が一般的です。着手金は案件を依頼した際に支払う費用で、報酬金は案件解決後に支払う費用を指します。
「経済的利益」とは、依頼者が獲得した遺産の価額を基に計算されます。例えば、1000万円の遺産を獲得した場合、報酬金の割合が10%なら弁護士報酬は100万円となります。”
司法書士が代行できること
“司法書士は登記の専門家で、相続手続きにおいては主に不動産の所有権移転登記(名義変更)を担当します。弁護士でも不動産登記を扱う人はいますが少数で、不動産の名義変更は司法書士に依頼するのが一般的です。
遺産に不動産が含まれている場合、登記手続きを依頼できる司法書士に相談するのがおすすめです。また、司法書士は相続放棄の書類作成も対応可能です。
ただし、司法書士は紛争解決の権限がないため、遺産分割協議や調停、審判での代理交渉はできません。相続放棄も書類作成は可能ですが、手続きそのものは代行できません。
費用相場
不動産の名義変更を司法書士に依頼する場合、1件につき5~6万円程度が相場です。相続まるごと代行を依頼すると、20~50万円程度が一般的です。”
税理士が代行できること
“税理士は税務に特化した専門家で、相続税に関する業務を取り扱えるのは税理士だけです。相続税の申告は税理士に依頼するのが一般的です。また、必要に応じて遺産分割協議書の作成にも対応できます。
費用相場
相続税申告の費用は、遺産総額によって異なります。高額な遺産ほど税理士費用も上がり、一般的な範囲は20~50万円程度です。税理士事務所ごとに費用が異なるため、複数の事務所に問い合わせて比較すると、適正価格の事務所を見つけやすくなります。”
行政書士が代行できること
“行政書士は文書作成を専門とするプロフェッショナルです。不動産登記やトラブル対応、税務相談は行えません。主な業務には、自動車の名義変更や許認可の引き継ぎ、相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議書の作成などが含まれます。
費用相場
行政書士の費用は他の専門家に比べて比較的低めです。遺産分割協議書の作成は3~5万円程度、自動車の名義変更は1件あたり2~5万円程度です。遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更など、特定の手続きを依頼する場合には行政書士が適しています。”

相続手続きの必要書類を一覧表でご紹介!相続代続き代行業務のプロが徹底解説

「大切な人が亡くなってしまった…」
「はじめての経験で、相続手続きに必要な書類が分からない」

このようなお悩みを抱えてはいないでしょうか?
こちらの記事ではは、葬儀、法要で手一杯でご遺族に行うべき相続手続きに必要な書類が分からないという方のために相続手続きに必要な書類を相続代行業務のプロが徹底的に解説していきたいと思います。

遺産相続手続きの必要書類の一覧表

遺産相続手続きに必要な書類は以下の書類になります。
・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票、戸籍の附票
・印鑑証明書
・不動産登記簿謄本
・固定資産評価証明書
・金融資産の残高証明書
・遺産分割協議書
・遺言書の検認済み証明書、家庭裁判所の審判書 など

たとえ親族であっても、他の人が重要な書類を取り寄せる場合は、その本人からの正式な委任が必要です。
日本相続事務代行協会が業務を担当する際に最初に行うことは、戸籍謄本を集めることです。

出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本とは

相続において銀行などから必要とされる主要な書類は、故人の生涯を記録した戸籍謄本です。

故人の最終本籍地にある市役所や町役場でこの戸籍謄本を取得する際、文書は縦書きであり、氏名や生年月日などが横書きで記されています。また、文書の下部には死亡情報が追加されており、これは死亡戸籍と呼ばれます。

この役所では改製原戸籍も取得できることがありますが、通常は過去の本籍地の役所に再度申請する必要が生じます。

出生の戸籍

人の一生は、出生時に親の戸籍に名前が加えられることから始まります。この記録を出生戸籍と呼びます。

その後、引越しによる転籍や、結婚、離婚、養子縁組などで戸籍の所在地や筆頭者が変更されます。

これらの戸籍は、その時点での市役所にのみ保管されるため、過去の戸籍を取得する際には、それぞれの戸籍を順に追いかけて集める必要があります。

昭和の改製原戸籍と、平成の改製原戸籍

昭和時代の戦後初期に、民法の改正により戸籍謄本の形式が大きく変更されました。この時の改定を昭和の改製原戸籍と称します。

さらに、最近では以前の横書きの文書に縦書きで手書きされた形式から、コンピュータによる記録へと形式が一新されました。この新しいスタイルを平成の改製原戸籍と呼びます。

これらの戸籍も遺産相続の手続きで必要な書類となるため、漏れなく集めていくことが重要です。

戸籍謄本は何通必要?

戸籍謄本の取得は意外に費用がかかり、全てを揃えると大体1万円程度になることがあります。このため、複数の謄本を取得すると、費用がかさむので、通常は1セットだけ取得し、必要に応じて各機関に提出後、原本を戻してもらって再利用します。

しかし、生命保険や自動車の手続きのように原本が返却されないこともあるため、そのような場合は必要な分を余分に取得しておくことが望ましいです。”

法定相続情報を取得すれば1セットでOK

コンピュータを使用して法定相続情報一覧図(家系図)を作成し、該当する法務局に提出することで、法定相続情報の発行を受けることができます。

この情報は無料で、必要な分だけ何通でも入手可能ですので、パソコンの操作に慣れている方にとっては、非常に便利な方法です。”

印鑑証明書は特に重要な必須アイテム

遺産相続の手続きは、相続人の実印と印鑑証明書を用いて行われます。

故人の印鑑は全て効力を失い、その通帳の印鑑も同様です。

印鑑証明書には通常3か月や6か月の有効期限が設定されているため、一度に多くを取得する必要はありません。有効期限が切れたら新たに取得する方が適切です。

一回の申請で2~3通を取得するのが適量です。

実印または印鑑カードの紛失

登録済みの実印や、市役所等から提供された印鑑登録カードが見つからない場合は、紛失とみなされ、再登録や再発行の手続きが必要です。

その手続きは、本人が直接居住する市区町村の役場に出向けば、即座に対応してもらえます。”

印鑑登録をしていない

相続手続きでは印鑑証明書が不可欠です。

この証明書がなければ手続きは進まないので、速やかに役所で印鑑の登録を行ってください。

印鑑は任意のもので構いません。市販のものや三文判でも問題ないので、どれかを実印として選んで登録しましょう。

登録が完了すれば、印鑑証明書もその場で発行されます。

この手続きも、本人が直接窓口に行けば、即座に対応してもらえます。”

代理人が窓口へ行くケース

もし本人が病気などで役所に行けない場合は、他の方が代理人として登録手続きを行うことが可能です。

親族だけでなく、他の第三者でも構いません。

本人から代理人への委任状を用意し、本人の住所地にある市区町村役場で登録を進めます。

代理での申請の際は、手続きが一旦受け付けられた後、本人宛に確認のための書類が送られ、それを持って再度登録することが一般的です。

市区町村によって対応が異なるため、事前にホームページなどで詳細を確認することをお勧めします。

 

不動産があるときは、不動産登記事項証明書と固定資産評価証明書を取得する

不動産は、管轄の法務局で登記簿謄本が管理され、その所在地の市役所または市税事務所で、固定資産税が管理されています。

不動産ひとつずつに、登記簿謄本と固定資産税評価証明書があります。これらは相続登記の申請に必要になりますので、不動産ごとに、準備します。

また、固定資産税評価証明書には、不動産ごとに具体的な評価額が記載されていますので、遺産分割協議の際の、基準のひとつにもなります。

 

金融機関に残高証明書を請求する

故人の預金口座の残高は、死亡日に基づいた残高証明書で確認します。

すべての金融機関から故人名義の口座の残高証明書を集めることで、相続人がまだ認識していない定期預金や別支店の口座が発見されることがあります。

通常、これらの残高証明書は相続税の申告や遺産分割協議に使用されます。

相続税の申告においては、死亡日の前後の預金の動きも税務調査の対象になることがあります。また、遺産分割協議で不要な疑念を解消するためにも、預金通帳を通じて資金の流れを明確にすることが重要です。

遺産分割の詳細は遺産分割協議書にまとめられます。

 

住民票は意外と必須アイテムではない

住民票は住所を証明する公文書ですが、銀行の手続きには不要です。

不動産の相続登記を行う場合、故人の住民票の除票と、不動産を引き継ぐ人の住民票が必要とされます。

 

遺産分割協議書

これもまた、必ずしも必要とされるものではありません。

銀行や証券会社には遺産分割協議書の提出が必要ないことが多いです。

ただし、不動産を法定分割以外の方法で相続する場合は、その内容を明記した遺産分割協議書が求められることがあります。”

 

遺言書がある場合

故人が遺言書を遺していた場合、その内容に基づいて遺産相続の手続きが進められます。

自筆遺言書がある場合は、家庭裁判所での検認が必要とされ、全相続人の同意のもとに遺言書の開封や公開が行われます。

検認完了後、家庭裁判所からは検認済証明書が発行され、これをもって各種手続きが行われます。

一方、公正証書遺言の場合は裁判所の検認は必要なく、その謄本を使って相続手続きが行われます。

遺言で遺言執行者が指定されている場合、その人が相続手続きを行います。

遺言執行者が未指定の場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることもできますが、選任されなくても手続きが進む場合がありますので、状況に応じた判断が求められます。

相続人に未成年者がいる場合、審判書を取得する

“未成年者は自身で有効な遺産分割協議を行うことができないため、通常は保護者や他の親族が代理で協議を行います。

例えば、父親が亡くなった場合、母親と未成年の子どもが共に相続人になりますが、母親は自分の相続権と未成年の子どもの保護者としての役割を同時に果たすことはできません。

このような状況では、家庭裁判所に未成年者の特別代理人の選任を申し立てる必要があり、選任された代理人と母親が一緒に遺産分割協議を行います。

特別代理人が選任された後、その詳細が記載された審判書が家庭裁判所から発行されます。

特別代理人としては、未成年の子の祖父母や他の親族が推薦されることがあります。”

 

各手続き機関ごとに必要書類を収集する

必要な公的書類が整ったら、それぞれの手続き機関で申請を行います。

例として、銀行では各銀行固有の手続きがあり、市役所など公的機関でも各種手続きごとに異なる書類が必要です。また、証券や会員権などの手続きも同様です。これらの書類を集めた上で、すべての相続人が記入し押印し、必要な公的書類を添付して、各機関に提出することになります。”